現場情報
石持ち一文字
軒先の瓦にはいろいろな種類があります。
写真は「石持ち一文字」と呼ばれる形です。
よくある「万十」によく似ていますが微妙に違います。
まず丸い部分が、万十の場合こんもりと盛り上がっていますが、石持ちはまったいらで、角が面取りされていません。
地瓦も、「切落し」といって、面取りしていないものが使われています。
それともう一つ、瓦の下端がまっすぐに通っています。(古い瓦なのでそれほどまっすぐではないですが・・・)
万十だと上面と同じようなカーブになりますが、これはまっすぐなので一文字ということになります。
一般の方はご存じないかと思いますが、瓦は形があるだけでなく、大きさもいろいろあります。
1坪当たりの枚数が53枚だと53(ゴ・サン)という風に表現するのですが、56・60などいろいろなサイズがあります。
現在ではJIS規格の53Aというサイズにほぼ統一されています。
もちろん修理のために、いろいろなサイズの瓦が今でもつくられていますが、古いものと混ぜて使うのは意外と難しいことなのです。
重要文化的景観保存事業
重要文化的景観というとあまり耳慣れないかもしれませんね。
先日天橋立が認定されたことで少しニュースにも出たのですが、地域の人々の生活や風土に深く結びついた特有の景観として、保護をしてくため、国が認定をしています。
京都府では2009年に宇治市が認定を受けています。
JR宇治駅を降りて宇治橋通り商店街に向かうと、真正面に中村藤吉本店というお茶屋さんがあります。
こちらの店舗が、重要文化的景観の重要構成要素として指定され、往時のたたずまいを復元するための工事をすることになりました。
以前から建物の修理などをさせていただいていたご縁から、今回の改修工事も任せていただくことになり、当社の得意とする職人技を駆使し、取り組んでいるところです。
写真は現在の状況です。
明治28年に建てられた時のままの大黒柱や地棟・梁はそのままにして、耐震補強も行っています。
壁に張られているのは荒壁パネルというもので、昔ながらの荒壁の素材で作られたものです。
実験により耐震性が確認されており、耐力壁として使っています。荒壁を現場で施工しなくて済むので、工期が短縮できます。
外観のポイントとなる越屋根も姿を現しました。
ちなみに店舗は通常通り営業しておられ、現場は今日からお休みですが、お店は例年通りお正月も開いています。
工事中の藤吉さんを見るチャンスもなかなかありませんので、のぞいて見られては・・・
銅板の屋根に穴が・・・
銅板の穴、わかりますか?
屋根の腰葺に銅板を張っているところって、京都ではよくあるのですが、最近厄介なことが起こります。
写真はとある茶室の屋根ですが、瓦のくぼんだ所から、雨水が銅板に伝うので、ちょうどその部分が傷んで穴が空いてしまいました。
昔(20年くらい前)は「アカ(銅)の屋根は100年もつ」て言われていたんですがね・・・
なぜこんなになったか実のところよくわからないんですが、酸性雨や大気汚染の影響で、瓦に降り積もったホコリが、わずかな雨が降ったときに、高い濃度で溶け出し、写真のような部分を傷めてしまうのではないかと思われます。瓦の小口にも土みたいなのがこびりついてますが、この中に化学物質などが混じっているのでしょうか?
ザーッと降れば、いっぺんに流れていくのですが、濡らす程度の雨の時、濃いのが表面張力で残っちゃうんでしょうね。
そんなわけで、最近は銅板を使わず、表面をコーティングした鋼板を使用することも多くなりましたが、銅は独特の経年変化が味わえるので、捨てがたいですね。
さて、これどうやって修理するかといいますと、穴の部分にコーキングを打って、応急処置はOK。
穴の修理だけなら、ハンダ付けすればよいのですが、今回は横一列に点々と穴が空いていたので、一文字葺の銅板をもう一枚かぶせて、瓦の下に差し込みました。
これで10年くらいは大丈夫でしょうが・・・。
てっぽうムシ
この芋虫みたいなやつ、「テッポウムシ」です。
カミキリムシの幼虫で、生きている木(伐採される前)に産み付けられて、木の中で成長します。
地松材に入っていることがよくあり、伐採後も木材の中で生きていて、ミミズが這ったような跡をつけてしまう厄介な虫です。
といっても、成虫になると飛んで行ってしまうので、シロアリのように放っておくと食害されて家の寿命を縮めてしまうというようなことはありません。
近くにいたので、多分これが成虫。
今回は雨漏りで腐ってしまった木材(腐葉土のようになって湿り気もたっぷり)に卵を産みにきたみたいです。
先にも書きましたが、普通は生きている木に寄生するので、建物から出てくることはあまりないはずなのですが、先日、築後10年以上たっている建物の桧の梁が、テッポウムシに食われました。
化粧梁にミミズが這ったような跡ができてきたとのことだったので、みてみると、テッポウムシのようでした。
ここは雨もりもなく、健全な状態だったのに・・・
異常気象で生態が変わったのだろうか???
気密測定完了
気密測定を行いました。
強風のため測定がなかなかできませんでしたが、無事合格。
c=0.6cm2/m2ということで、まずまずです。
自然給気口・エアコンスリーブ・給排水配管を仕込んだ後なので、若干性能が落ちることを考慮すれば、かなり上出来です。
参考までに、c値というのは、床面積m2あたりの隙間の大きさです。
この建物の場合、延べ床面積が117m2なので、家全体で117×0.6≒70cm2の隙間があるということです。
70cm2ってピンときませんよね。名刺の大きさが約50cm2なので、名刺1.4枚ということになります。
玄関や窓などのサッシにもいくぶん隙間が生じますから、それ以外のところに隙間はほとんどないということです。すごい!!
ちなみに、一般的に高気密住宅と呼んでもよいという数字が、c=5.0です。けれども、2.0以下でないと計画換気ができないとも言われています。「えっ」と思われるかもしれませんが、気密性が低いと、温度差や風圧などによって、勝手に換気が起こってしまい、およそ計画通りにいかないということです。そればかりか、家全体をまんべんなく喚起することができず、換気不足になるエリアが生じてしまうのです。
要するに、気密性が高いから換気が必要になるのではなく、きっちり換気するためには高い気密性が必要ということです。(←重要)
計画換気について詳しい話を聞きたい方は、いつでもお問い合わせください。
breeze@soyokazenoie.com まで