
現場情報
エアコン室外機の風
このところ猛暑日が続いています。
なんだか35℃くらいは当たり前という状況になってきました。
この”気温”というのは、昔、百葉箱というのがあったのを覚えておられるでしょうが、百葉箱の中にある温度計の温度です。つまり、風通しの良い日陰の家の中の温度ということです。
風通しの良い家はエアコンが要らないなんて言いますが、風通しの良い家であれば、気温37℃の日は、室内が37℃ということになります。
そよかぜの家は、その名の通り、家の中の風通しにも配慮した設計を行いますが、機械換気を計画通りに動かすためには、窓を閉めて気密性を高めた状態が最適です。つまり、窓を閉めている方が換気は確実に行われているということです。
真夏の日中は、いくら風通しを良くしても、外が暑いんだから暑くなるばかりです。むしろ、断熱性の高い家は、窓をピッチリと閉めている方が涼しいのです。
尖山ショールーム(自宅)では、24時間1~2台のエアコンが運転していますが、1か月の電気代は真夏のピーク時で2万円あまりです。断熱性・気密性が高いので、家中の温度が27~8℃に保たれます。
しかし、このところの猛暑のなかでは、寝室や子供部屋のエアコンも運転しないと足りません。
この暑さがいつまで続くのかと思っていたら、明日あたり恵みの雨が来そうです。
少し雨が降ると、まわりの土地全体を冷やしてくれるような気がします。自然の力は偉大です。
ところで、エアコンの室外機の風が、お隣の窓に向いているので気になるということがよくあります。
そんなときの秘密兵器があります。
写真のカバーのようなものが、上吹き出しガイドと呼ばれるものです。
これをつければ排気が上向きになるので、お隣にご迷惑はかかりません。
長期優良住宅の基礎配筋
長期優良住宅といっても、そよかぜの家で通常建てているしようとさほど変わるものではありませんが、構造面で少し違いが出る場合があります。
以前に水平構面のお話をしましたが、今回は基礎の話です。
木造で住宅を新築する場合、今やほとんどがベタ基礎です。
そよかぜの家では、ある程度仕様を統一して、配筋・スラブ厚などを決定していました。
今回、長期優良住宅の設計にあたり、「木造住宅のための構造の安定に関する基準に基づく横架材及び基礎のスパン表」というガイドラインに沿って、配筋の見直しを行いました。
この○○○スパン表なるものは、1件ごとに構造計算するのは大変なので、やや過剰にはなっても不足はしないよというような仕様になっています。
配筋についていえば、建物の隅角部に耐力壁が来る場合の補強などが、加わります。
ご覧の写真は、昨日配筋検査を終えた現場です。
この現場は、1階の部屋がかなり広く、間仕切りも少ないので、基礎スラブのスパンが大きく、間仕切りの開口部のスパンも大きくなります。
スパン表が安全側に見ているのに加え、現場での施工性を考慮し配筋を単純化する際にまたまた安全側に設計しますから、ご覧の通り、鉄筋だらけです。
鉄筋の値段が安いとはいえ、重量にすると通常の2~3割増しくらいにはなっています。
床下のグラスウール
30年くらい前の建物の改造をすると、床下にグラスウールが入っていることがよくあります。
私が結露のお話をするときには、必ず夏場の床下の結露についてもご説明するのですが、現場を見れば一目瞭然です。
事前の調査では、キッチンの床下点検口から床下を覗いたのですが、カビ臭いにおいもなく、カラッとしていたので(グラスウールも)、おそらく大丈夫だろうという推測のもと、既存の床をできるだけ利用するような内容で設計しました。
ところが、いざ床をめくってみると、シロアリの被害がありました。玄関土間の近くだったので、土から上がったものかとも思われましたが、念のため、床をめくらない予定の部分も点検しました。
通気口が小さかったので、通れるようにはつって中に入ると、なんと、めっちゃカビ臭いじゃないですか!
さらに見ると、床下のグラスウールは、水が滴るほどびちょびちょですし、断熱受・大引・根太が白アリに食われてなくなっていました!!
床板は後から張り増して3重張りになっていたので、上を歩いても全く傷んだ感じがしませんでした。
さっそく、3重にも張られた床をすべてはがし、シロアリに食われた材を取り除きました。
さいわい、シロアリの被害は、通気が悪かった一部分だけで納まっていて、土台は全く被害を受けていませんでしたので、十分修復可能でした。
通気が悪かったため、グラスウールが湿気のたまり場になっていたのでしょうね。こわいこわい・・・
最近の建物は、ベタ基礎がほとんどですから、これほどまでに湿気る事はないでしょうが、やはり、繊維系の断熱材は結露対策という意味では、難点があると私は思います。特に床下への使用はすべきではないでしょう。
木のいえ整備促進助成金
長期優良住宅の認定を受け、住宅履歴情報を整備し、建築中の現場を公開するという条件で、最高100万円の助成金が受けられる制度が、「木のいえ整備促進事業」です。
当社が設計・監理する物件で、助成決定をいただきました。
設計者の仕事というのは、いわゆる設計業務のほかにも、確認申請等の手続きをしたり、開発協議をしたりといろいろな事務手続きが含まれます。むしろ、そういった事務仕事にとられる時間の方が多いかもしれません。
今回の案件は、開発協議からスタートしたので、プランが決まった後、建物の着工まで丸3か月を要しましたが、その間、町との開発協議、確認申請の事前協議、民間の確認検査機構での確認申請、それと並行して、長期優良住宅の技術的審査、その後府の長期優良住宅認定申請、そして最後に、助成金の申請を行いました。
いろいろな制度ができるのはよいのですが、いわゆるワンストップサービスだとどれほど楽でしょうか。
梅雨の合間ではありますが・・・
梅雨まっただ中にもかかわらず、屋根の葺き替えを敢行しています。
今年は3月も4月も5月もとても雨が多かったので、屋根屋さんは梅雨だからといって休んでなんかいられません。
幸いなことに、いわゆる”親方日和”といって、雨は夜だけで昼間は持ちこたえてくれているので、意外にも毎日休まず作業ができています。
ご覧の写真はルーフィングを貼ったところ。
普段見慣れているルーフィングは、ゴム系・アスファルト系などですが、これは高分子系と呼ばれるものです。
高分子樹脂が、タッカーや釘の穴をしっかりとふさいでくれます。
オレフィン樹脂をクラフト紙ではさんであり、軽量で取り扱いも楽です。それに表面にゴムのぶつぶつがスパイクのようについていて、全然滑りません。このツブツブは、横桟を打ったときに水の抜け道をつくる効果もあります。
黒いルーフィングに比べて熱の吸収もずいぶんましです。
新作
南からの外観
道路側からの外観
二階の屋根をはずしてみたところ
二階をはずしたところ
今回は太陽光発電システムを載せるので、南向きに片流れ屋根にしました。
屋根勾配に合わせて2階のパブリックスペース上にロフトをとり、広めのホールとあわせてユーティリティースペースをつくりました。ここはる気抜けを通して1階リビングともつながっており、つながりながら隠せる空間です。
将来子供たちの遊び場所になるでしょう。
そよかぜの家の特徴は、ご覧の通りのワンルームのような間取りです。
間仕切りを減らし、廊下スペースを居住スペースに取り込むことで、小さな床面積でも大きく使うことができます。
断熱・気密性能が良いからこそできることです。
ごろんぼのカビ
「ごろんぼ」という言葉は何度かご紹介していますが、松の丸太を使った梁のことです。
松といえばすべり止めのロジンなどにも加工されるマツヤニを思い浮かべます(私だけか?)
このヤニが松の強さのもとといわれています。油分が多いので、とても粘り強く、重い荷重にも耐えることができます。
松に限らず、木材は山の斜面に生えていますので、当然株(地面に近い部分)の方で曲って上に向かって伸びます。
この曲った木を人の体にたとえて、外側(斜面の下向き)を背、内側(斜面の上向き)を腹(ハラ)といいます。小屋張りなどに用いられるときは、背を上に向けると、人がお馬さんの格好をして背中に子供を乗せているのと同じで、少々重いものを載せても踏ん張ることができます。これが反対向きだと辛抱できないですよね。(あえてこう用いることもありますが今日は省略します)
私は、この強さを生かして、小屋組以外のところにもよく用います。曲った感じがデザイン的にも面白いので、化粧で使うことも良くやります。
さて、この「ごろんぼ」は前述のようにとても油分が多いため、乾燥させるのに時間がかかります。乾燥機などに入れても芯まで乾燥させることは今の技術ではできません。
また、切る時期にもよりますが、鉄砲虫が入ることも良くあります。
今回使った材料は、ムシは入っておらず、とても素直な良い材でしたが、とても油分が多く、加工するとすぐ表面にヤニが吹いてくるほどです。棟上げの後、雨が続いたこともあり、結構カビがついてしまいました。
ごろんぼにカビがつくのはよくあることで、工事中にだんだんと消えて行ってくれることが多いのですが、今回はなかなか消えてくれません。いよいよ仕上げの工程に入るので、その前にカビ取りをすることにしました。
カビとりは、アルカリの薬剤を用いてカビ菌を殺し、その後中和して完了です。
ベテランの洗屋(あらいや)さんにお願いしましたので、材を必要以上に傷めることなく、カビを落とすことができました。
出来上がりの写真は、また今度ご紹介します。
エコポイント住宅証明書
先日来申請していた、「エコポイント対象住宅証明書」が届きました。
当社独自の仕様を用いての申請だったので、いわゆる仕様規定(断熱材の厚み・種類で認定をとる)のではなく、Q値μ値を計算して申請しました。
事前に、長期優良住宅の申請に向けてCADのバージョンアップをして、温熱環境計算に対応する準備をしていたのですが、いざ実際の物件についてプログラムを走らせると、使いにくことがたくさんあり、福井コンピューターの担当者に方にも何度も問い合わせての計算となりました。
以前にご紹介した遮熱シートでの申請を試みましたが、残念ながら、現在のところ断熱材でないとダメという判断を受け、これについては断熱性を評価しませんでした。今回の場合は、もともと壁にはウレタンを使用していたので、それほど大きな変更もなく、認定基準を満たすことができました。
それにしても、申請をする私も、認定をする機関も、CADのメーカーも、誰にとってもはじまったばかり制度ですから、何かにつけてそれぞれの立場で「確認します」ということが多く、とても時間がかかってしまいました。
それでも今回の申請で、だいたいのやり方がシミュレーションできたので、次からはスムーズにいくことでしょう。
別件で長期優良住宅の認定申請を提出しましたが、今回と同じ計算方法・同じの添付書類をつけたので、見る側もスムーズだと思います。
さて、エコポイント対象住宅証明書が届いたものの、実際にエコポイントを申請するのはまだ先です。
住宅が完成してから、工事証明書・確認済証・検査済証などを添付して、お客様が申請されることになります。
ほかにも、当社でとりつけるエアコンにエコポイントがつきますので、9000P×2台分=18,000ポイントゲットです。
かなりお得な感じですね。
築60年の土蔵を解体
ご覧の写真は、”蔵”の解体の様子です。いわゆる本蔵ではありませんんが、それでもしっかり土は塗ってありました。
昔なら、土も新しいものと混ぜてもう一度使うのでしょうが、今回は処分しました。それでも、写真でも見えている小屋梁は再利用することにしました。
新しい建物にも、化粧針として使います。
60年経った今でも、少しも傷んだ様子はありませんので、そのままの木肌を見せて使います。
これは何でしょう?
実は、解体した建物に使われていた込栓です。樫の木でつくられていますが、先の方は壁土の中に埋まっていたので汚れていますが、木に刺さっていた部分は、つくったときのままです。
あまりにきれいだったので、記念にとっておきました。
気密測定
北白川の現場で気密測定を行いました。
よく、最近の家は気密性が高くなったために機械による換気が必要になったんだという意味のことをおっしゃる方がおられますが、少しポイントがずれています。
そもそも、戦前くらいまでの日本(京都近辺)の家は、吉田兼好よろしく”夏をもって旨とすべし”として建ててこられました。
私が幼いころ住んでいた家も、夏はというと、南北面の建具はほとんど解放され、家の内部の間仕切りも取り外されまたは葦戸に取り換えられて、蚊帳をつって寝ていたものです。
でも冬は、火鉢が常に置かれていて、練炭や豆炭が点いていましたが、これでも一酸化炭素中毒にはなりませんでした。部屋を暖めるという感覚がなく、火にあたって暖をとるという感じでした。
さらに、季節の変わり目には畳をあげて大掃除をし、床下の湿気を開放していました。
そんな暮らしをしていたなら、計画換気は必要ないでしょうが、昨今の住宅の間取りや冷暖房で部屋を暖めるという生活様式では、ちょっと具合が悪いのです。十数年前から出てきたシックハウスは、建材などから出る有害物質が原因というだけではなく、換気不足とそれによる結露が一因であることは明らかです。
そんなことは百も承知のはずなのに、のど元過ぎれば熱さを忘れるというのか、ここ数年住宅業界において換気についての意識が薄れてきています。同時に気密に関しては触れないでおこうというような感じさえします。
多くのメーカーの換気システムは第三種換気といわれる方式ですので、ある程度の気密性能がなければ、計画換気として成り立たないのです。つまり、高い気密性は必要不可欠です。
まあ、換気の話をしだすと長くなるので、このくらいでやめときます。
興味のある方は、「換気って深いんだぁ~」という小冊子を差し上げますので、メールください。
というわけで、当社では高い気密性能を確実にするため、全棟で気密測定を行っています。
ご覧のような大きなファンとコンピュータを接続し、圧力の変化を測定することで、隙間相当面積を推測します。
今回の結果はc=0.6cm2/m2
まずまずの数字です。
模型写真
こちらは今度宇治田原町で建てる物件の模型です。
写真でご紹介します。
60坪近くある大きなお家です。50分の1だと結構な大きさです。
土地柄、オーソドックスな外観を求められました。
庭で撮影したので、実際の日の当たり具合がよくわかります。
屋根をとりはずしたところ。まん中に大きな吹抜けがあり、そこに面して階段があります。この辺はそよかぜの家が得意なところ。
大きな吹抜けがあっても、水平剛性もきちんと検討しますので、長期優良住宅にも適合します。
分解模型をつくると、2階と1階の壁の位置の整合性もよくわかります。
さらに2階をはずしたところ。大きなLDKですが、階段室の北側は採光があまり取れていません。
お客様のご希望によってこのような形になりましたが、図面の段階でも再三説明はしていましたが、これでさらに念押しです。
なるべく間仕切りを減らすご提案をしたのですが、決めるのはあくまでお客様です。だからこそ、模型などで確認していただくことが重要です。
低圧樹脂注入
写真はコンクリートにエポキシ樹脂を注入しているところ。
鉄筋コンクリートの躯体のクラックに、ご覧のように注射器を取付、樹脂を注入してコンクリートの補強を行っています。
エポキシ樹脂は圧縮強度・せん断強度共に強く、注入をすることで元の鉄筋コンクリートより強度が上がるというデータがあるほどで、マンションなどの外壁改修や、木造の建物でも基礎の耐震補強などに用いることもあります。
強度を発揮するためには、クラックの奥の奥まで樹脂を注入する必要があり、そのためにさまざまな工法が開発されています。
中でも、今主流なのが低圧注入工法です。かつてはポンプを使って高い圧力で樹脂を注入していたのですが、細いクラックになればなるほど、クラック内にある空気をうまく排出できず、樹脂が均等に行きわたらないことがわかってきました。そこで、発想を転換して、なるべくゆるい圧力で注入することで、細いクラックの隅々まで毛細管現象を利用して吸い込ませようという工法が開発されました。毛細管現象で吸い込ませるためには、樹脂をシャバシャバの状態にしてやる必要があり、そうするとせっかく注入した樹脂が流れ出てしまいます。そこで、ご覧のようにクラック部分をあらかじめシールして、こぼれ出ないようにして注入するという工法が確立されました。
材料の値段も高く、手間も結構かかるのですが、浮いている部分をはつり出してモルタルなどで補修するよりも、ゴミや騒音が少なく、工期も短縮できます。
今では、鉄道や高速道路の橋梁・橋脚の補強などにも幅広く使われています。